iDeCoとNISAの使い分け|所得控除と非課税、どちらを先に使うべきか

公開:2026年9月6日 執筆:もりそん 計算の根拠:計算根拠・出典一覧

iDeCo(個人型確定拠出年金)と新NISAは、どちらも「運用益が非課税」ですが、似ているのはそこまでです。 iDeCoは掛金を出した年の所得税・住民税が減る代わりに60歳まで引き出せず、NISAは所得控除はないがいつでも引き出せる。 この違いをふまえた順番を決めておくと、毎月の積立の配分に迷わなくなります。金額はiDeCo節税シミュレーターと積立・複利シミュレーターで試算できます。

結論:順番は「生活防衛資金 → NISA → iDeCo」、ただし所得税率が高い人はiDeCoを厚く

  1. 生活費6か月分の預金を先に。これがないと相場の下落時に投資を続けられない
  2. NISA:いつでも引き出せるので、住宅・教育・転職など「使う時期が決まっていない」お金の置き場に向く
  3. iDeCo:老後まで確実に使わないお金だけ。所得税を払っている人ほど有利で、税率20%以上(年収およそ700万円以上)なら優先度がNISAと並ぶ

2つの制度の違い

iDeCo新NISA
掛金の所得控除あり(全額)なし
運用益非課税非課税
引き出し60歳まで不可いつでも可
受け取り時課税(退職所得控除・公的年金等控除の対象)非課税
年間の上限職業別(会社員27.6万円/自営業81.6万円など)360万円(つみたて120万+成長240万)
生涯の上限なし(年額×年数)1,800万円(売却分は翌年復活)
手数料加入時2,829円+毎月171円〜+信託報酬信託報酬のみ(口座管理料は無料)
買える商品運営管理機関が選んだ投資信託・定期預金・保険つみたて枠は金融庁選定の投信、成長枠は株式・投信など

iDeCoの節税額は「税率」で決まる

iDeCoの掛金は全額が小規模企業共済等掛金控除になり、節税額は掛金×(所得税率×1.021+住民税10%)です。 会社員の上限である月23,000円(年27.6万円)を拠出した場合の年間の節税額は、次のようになります(独身・東京都・賞与なしの概算)。

年収所得税率年間の節税額掛金に対する率30年の累計
300万円5%約41,690円15%約125万円
500万円10%約55,780円20%約167万円
700万円20%約83,959円30%約252万円

掛金の15〜30%が毎年戻ってくるのと同じなので、投資の利回りとは別枠で「確実な15〜30%」が乗るのがiDeCoの本質です。 年収700万円なら30年で約252万円、これはNISAでは得られません。逆に所得税を払っていない人(専業主婦・年収160万円以下)は、この効果がゼロになります。

iDeCoの制約:引き出せない・受け取り時に課税・手数料

  • 60歳まで引き出せない:途中で家を買う、教育費が要る、失業した。どれでも取り崩せません。「使うかもしれないお金」は入れない
  • 受け取り時は課税される:一時金なら退職所得(退職所得控除の対象)、年金なら雑所得(公的年金等控除の対象)。控除の範囲内なら税金はかからないが、会社の退職金が大きい人は控除枠を退職金と分け合うことになる。退職金と一時金を近い時期に受け取る場合の控除の調整ルールは2026年に見直されているので、受け取る前に金融機関で確認する(退職金の税金の計算)
  • 毎月の手数料:国民年金基金連合会と事務委託先で最低171円。掛金5,000円なら3.4%に相当する。運営管理機関の手数料が0円の証券会社を選ぶ
  • 元本確保型を選ぶと手数料負け:定期預金型を選ぶと運用益がほぼゼロで手数料だけかかる。節税効果でカバーはできるが、運用益非課税の意味はなくなる

NISAの制約:所得控除がない・枠は1人1口座

  • 掛金で今年の税金は減らない。効果は将来の運用益に対する20.315%の税金が0になること
  • 年間360万円・生涯1,800万円の枠。売却すると翌年に簿価分の枠が戻る
  • 損失が出ても、課税口座の利益と損益通算できない(NISA内の損は税務上「なかったこと」になる)
  • 金融機関は1人1つ。年単位で変更できるが、その年に買付していると変更できない

ケース別の配分の考え方

状況優先理由
年収400万円以下・貯金が少ないNISA税率5〜10%で節税額が小さく、流動性のほうが価値がある
年収500〜700万円・老後資金を確実にNISAを軸に、iDeCoを月1〜2万円節税15〜20%を取りつつ、引き出せない額は抑える
年収800万円以上・退職金が少ないiDeCoを上限まで+NISA税率20〜33%で節税が大きく、退職所得控除の枠も余っている
専業主婦(夫)・所得税なしNISAのみiDeCoの所得控除が効かず、手数料だけかかる
自営業・フリーランスiDeCo(上限月6.8万円)を優先厚生年金がない分を補う。国民年金基金・小規模企業共済との合計で考える
退職金が多い会社員NISA優先、iDeCoは年金受け取り前提一時金だと退職所得控除を退職金と分け合い、課税されやすい

毎月いくら積み立てられるかは手取りから、その積立が将来いくらになるかは複利シミュレーターで確認してください。

始める順番が決まったら、口座を用意するPR

iDeCoは運営管理機関(証券会社など)への申し込みが必要で、加入手続きに1〜2か月かかります。掛金を始めたい月から逆算して申し込み、口座管理手数料と商品ラインナップで金融機関を選びます。NISAとの配分そのものに迷う場合は、無料の貯蓄相談でFPに確認する方法もあります。

よくある質問

iDeCoとNISA、どちらを先に始めるべきですか?

生活費6か月分の預金を確保したあとは、まずNISAです。いつでも引き出せるため、使う時期が決まっていないお金の置き場に向きます。所得税率が20%以上(年収およそ700万円以上)の人は、iDeCoの節税効果が掛金の30%前後になるので、老後まで使わない金額の範囲でiDeCoを並行させる価値があります。所得税を払っていない人はNISAだけで構いません。

iDeCoの節税額はいくらですか?

掛金×(所得税率×1.021+住民税10%)です。会社員の上限である月23,000円を拠出すると、年収300万円で年約41,690円、500万円で約55,780円、700万円で約83,959円の税金が減ります(独身・東京都の概算)。年末調整で払込証明書を提出しないと反映されません。

iDeCoは受け取るときに税金がかかりますか?

かかります。一時金で受け取れば退職所得として退職所得控除の対象になり、年金で受け取れば雑所得として公的年金等控除の対象になります。控除の範囲内なら税金はかかりませんが、会社の退職金が大きい人は控除枠を分け合うことになるため、受け取り方と時期の設計が必要です。