退職金の税金の計算|退職所得控除と2分の1課税、手取りの出し方

公開:2026年9月6日 執筆:もりそん 計算の根拠:計算根拠・出典一覧

退職金は、給与や賞与とはまったく別の計算で課税されます。勤続年数に応じた大きな控除があり、控除を超えた部分も半分しか課税されず、他の所得と合算されない。 結果として、日本企業の平均的な退職金では税金がかからない人が多数派です。この記事では計算の手順を例で追い、税金がかかるケースと注意点を整理します。 自分の金額は退職金の手取り計算で試算できます。

結論:(退職金−退職所得控除)×1/2 に、所得税と住民税10%がかかる

  1. 退職所得控除を出す:勤続20年以下は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超は800万円+70万円×(勤続年数−20年)。勤続年数の1年未満は切り上げ
  2. 課税退職所得=(退職金−控除)×1/2。1,000円未満切り捨て
  3. 所得税=課税退職所得×税率(5〜45%)−控除額、に復興特別所得税2.1%を加算。住民税=課税退職所得×10%
  4. 手取り=退職金−所得税−住民税。社会保険料はかからない

計算例

例1:勤続30年・退職金2,000万円例2:勤続10年・退職金800万円
退職所得控除15,000,000円(800万+70万×10年)4,000,000円(40万×10年)
控除後5,000,000円4,000,000円
課税退職所得(×1/2)2,500,000円2,000,000円
所得税(復興税込み)155,700円104,600円
住民税(10%)250,000円200,000円
手取り19,594,300円7,695,400円

例1では2,000万円に対して税金は約41万円、実効税率は約2.0%です。同じ2,000万円を給与として受け取れば税と社会保険料で700万円前後引かれるので、退職所得の優遇の大きさが分かります。

退職所得控除の早見表

勤続年数控除額勤続年数控除額
2年以下80万円(最低額)25年1,150万円
5年200万円30年1,500万円
10年400万円35年1,850万円
15年600万円38年2,060万円
20年800万円40年2,200万円

勤続年数は入社日から退職日まで。1年未満の端数は切り上げなので、19年11か月で辞めると20年、20年1か月なら21年として計算されます。 21年目に入ると控除が70万円増えるため、退職日を数週間ずらすだけで手取りが数万〜十数万円変わることがあります。障害が原因の退職は控除に100万円が加算されます。

税金がかかりやすくなる3つのケース

1. 勤続5年以下の「短期退職手当等」

勤続5年以下の場合、控除後の金額のうち300万円を超える部分は2分の1になりません。役員等(法人の役員・議員・公務員の管理職など)は5年以下なら全額が2分の1の対象外です。 転職を繰り返して短期間で退職金を受け取る人、ストックオプション的な高額の一時金を受ける役員は注意が必要です。

2. 「退職所得の受給に関する申告書」を出していない

この申告書を会社に提出しないと、退職所得控除が適用されず、退職金の額に一律20.42%が源泉徴収されます。勤続30年・退職金1,500万円なら、本来0円の税金が約306万円引かれます。 確定申告で取り戻せますが、退職時に必ず提出してください。転職先で企業年金の一時金を受け取るときなども同様です。

3. iDeCo・企業型DCの一時金と退職金を近い時期に受け取る

確定拠出年金の一時金も退職所得です。会社の退職金と近い時期に受け取ると、退職所得控除を「重複する勤続(加入)期間」の分だけ減らして共有することになり、課税されやすくなります。 受け取る順番と間隔で扱いが変わり、そのルールは2026年に見直されているため、iDeCoの受け取り方(一時金か年金か、いつ受け取るか)は退職の数年前から金融機関に確認して設計してください。 判断の材料はiDeCoとNISAの使い分けに整理しています。

一時金で受け取るか、年金で受け取るか

一時金年金(分割)
所得の種類退職所得(分離課税)雑所得(総合課税)
控除退職所得控除+1/2公的年金等控除(他の年金と合算して判定)
社会保険料への影響なし国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料の算定所得に含まれる
向く人控除の範囲内に収まる人、まとめて運用・返済したい人控除を大きく超える人、受け取りながら会社側の運用利率が付く制度の人

多くのケースでは、退職所得控除の範囲内なら一時金が有利です。控除を大きく超える場合は、一部を一時金・残りを年金にする併用で、両方の控除を使う方法があります。

退職金を受け取ったあとに気をつけること

  • 翌年の住民税:退職金の住民税は受け取り時に天引きで完結する。ただし退職した年の給与に対する住民税は翌年6月に納付書で届く(住民税の支払い時期)
  • 国民健康保険料は退職所得を含めない:翌年の国保料は前年の給与所得で計算され、退職所得は算定に入らない。年金形式で受け取ると雑所得として入る
  • 確定申告が必要な場合:申告書を出していない、年の途中で退職して年末調整を受けていない、医療費控除やふるさと納税を使いたい、などのとき

退職前後の手続きの順番は姉妹サイトの退職後の手続きガイド、 まとまった資金の置き場は積立・複利シミュレーターで検討できます。

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よくある質問

退職金はいくらまで税金がかかりませんか?

退職所得控除の範囲内なら税金はかかりません。控除は勤続20年以下で40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超で800万円+70万円×(勤続年数−20年)です。勤続30年なら1,500万円、38年なら2,060万円まで非課税です。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していることが前提です。

勤続30年で退職金2,000万円の税金はいくらですか?

退職所得控除1,500万円を引いた500万円の2分の1、250万円が課税退職所得です。所得税(復興特別所得税込み)が約155,700円、住民税が250,000円で、税金の合計は約41万円。手取りは約1,959万円です。

退職金に社会保険料はかかりますか?

かかりません。健康保険・厚生年金・雇用保険の保険料は退職金の対象外です。また翌年の国民健康保険料の計算にも退職所得は含まれません。年金形式で受け取った場合は雑所得となり、国民健康保険料や介護保険料の算定所得に含まれる点が違います。