手取りが額面より少ない仕組み|年収から引かれる4つの順番と割合

公開:2026年9月6日 執筆:もりそん 計算の根拠:計算根拠・出典一覧

求人票の年収500万円と、実際に口座へ振り込まれる金額は同じではありません。差の正体は社会保険料・所得税・住民税の3つで、 それぞれ計算のもとになる金額も、決まるタイミングも違います。この記事では、給与明細を上から順に読めるようになることを目標に、 引かれる順番と割合を整理します。自分の年収で試すなら年収手取り計算へ。

結論:引かれる順番は「社会保険料→所得税→住民税」

年収から手取りを出す計算は、次の4ステップで進みます。

  1. 給与所得控除を引く:会社員の「経費」に当たる控除。年収190万円以下は65万円、それ以上は収入に応じた式で、850万円超は195万円で頭打ち
  2. 社会保険料を引く:健康保険・厚生年金・雇用保険(40〜64歳は介護保険も)。年収に対して約14〜15%で、税金より先に、税金より多く引かれる
  3. 所得控除を引いて所得税を計算する:基礎控除(58万〜95万円)・社会保険料控除・配偶者控除などを引いた課税所得に、5〜45%の累進税率をかける
  4. 住民税を計算する:課税所得の10%+均等割5,000円。ただし前年の所得に対してかかり、翌年6月から12回に分けて引かれる

つまり手取り=年収−社会保険料−所得税−住民税。このうち最も大きいのが社会保険料で、年収500万円なら約723,148円、所得税(約120,500円)と住民税(約243,100円)を合わせた額より多くなります。

年収別の内訳例(独身・30歳・東京都・賞与なし)

年収社会保険料所得税住民税手取り手取り率
年収300万円457,72834,800115,7002,391,77279.7%
年収500万円723,148120,500243,1003,913,25278.3%
年収700万円1,039,652284,300375,5005,300,54875.7%

協会けんぽ東京都(令和8年度料率)、2025年税制改正後の控除額で計算。年収別早見表には100万〜2,000万円まで28段階を載せています。

ステップ1:給与所得控除(会社員の「みなし経費」)

自営業者は売上から経費を引いて所得を出しますが、会社員は個別に経費を計上できません。その代わりに年収に応じて自動的に引かれるのが給与所得控除です。 2025年の改正で最低保障額が55万円から65万円に上がり、年収190万円以下の人は65万円が引かれます。 年収500万円なら「収入×20%+44万円」=144万円。年収から控除を引いた残りが「給与所得」で、税金の計算はここから始まります。

ステップ2:社会保険料(税金より先に、料率で決まる)

健康保険料と厚生年金保険料は、年収ではなく標準報酬月額(月給を50等級の表に当てはめた金額)に料率をかけて決まります。 料率は健康保険が約10%(協会けんぽ東京都9.85%、都道府県で違う)、厚生年金が18.3%、いずれも会社と半分ずつ負担するので本人負担は合計約14%。 これに雇用保険0.5%と子ども・子育て支援金(0.23%の半分。2026年4月分から)が加わり、40歳からは介護保険(1.62%の半分)も引かれます。 標準報酬月額の決まり方は社会保険料の決まり方で詳しく解説しています。

社会保険料は「払った全額が所得控除になる」点も重要です。年収500万円なら約723,148円が課税所得から引かれるため、所得税・住民税を約144,630円押し下げています。

ステップ3:所得税(累進課税で、超えた部分にだけ高い税率)

給与所得から社会保険料控除・基礎控除・配偶者控除・扶養控除などを引いた残りが課税所得。ここに税率をかけます。 税率は課税所得195万円以下が5%、330万円以下が10%、695万円以下が20%、900万円以下が23%、1,800万円以下が33%、4,000万円以下が40%、それ以上が45%。 高い税率は「超えた部分」にだけかかるので、年収が上がって税率の区分が変わっても、手取りが減ることはありません。 求めた税額に2.1%の復興特別所得税を上乗せしたものが、給与から源泉徴収され、年末調整で1年分の差額が精算されます。

年収500万円(独身)の課税所得は約2,156,852円で税率10%の区分。所得税は年約120,500円です。

ステップ4:住民税(前年の所得に対して、翌年6月から)

住民税は課税所得(所得税とは控除額が少し違う)の10%+均等割5,000円(森林環境税1,000円を含む)。計算自体は単純ですが、 前年1〜12月の所得に対する税額を、翌年6月から翌々年5月まで12回で払うという時期のずれがあります。 新卒2年目の6月に手取りが減る、転職・退職の翌年に納付書が届く、というのはこの仕組みによるものです。 詳しくは住民税はいつから・いくら引かれるかにまとめました。

手取り率が75〜80%に収まる理由

年収300万〜800万円の手取り率が75〜80%に集まるのは、社会保険料が約14%でほぼ一定なうえ、所得税は控除が大きいため低い税率から始まるからです。 年収が1,000万円を超えると給与所得控除が195万円で頭打ちになり、所得税率も23〜33%に上がるため、手取り率は70%を切っていきます。 一方、厚生年金の保険料には標準報酬月額65万円の上限があるので、年収1,000万円以上では社会保険料の比率が下がります。 年収別の早見表で28段階の手取り率を並べると、この形がはっきり見えます。

手取りを増やす現実的な方法

  • 所得控除を使う:iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)、生命保険料控除、医療費控除、ふるさと納税(寄附金控除)。課税所得が減れば所得税率+10%の分だけ税金が減る。iDeCo・ふるさと納税のシミュレーターで金額が分かります
  • 配偶者・扶養親族の申告漏れをなくす:年末調整の申告書に書き忘れると、控除は受けられません
  • 賞与の比率:同じ年収でも賞与の比率が高いと、厚生年金保険料の上限(1回150万円)の関係で社会保険料がわずかに減ります。差は年数万円程度
  • 年収そのものを上げる:年収300万円台では税率が低いため、節税より昇給・転職の効果が圧倒的に大きい

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よくある質問

手取りは年収の何%くらいですか?

年収300万〜800万円の会社員でおよそ75〜80%です。社会保険料が約14%、所得税と住民税が合わせて5〜10%程度引かれます。年収が上がるほど所得税率が上がるため、年収1,000万円では約72%、1,500万円では約67%まで下がります。

額面から引かれる中でいちばん大きいのは何ですか?

社会保険料です。年収500万円(独身)の場合、社会保険料が約723,148円、所得税が約120,500円、住民税が約243,100円で、社会保険料だけで税金の合計より多くなります。ただし社会保険料は全額が所得控除になるので、税金を押し下げる効果もあります。

年収が上がって税率の区分が変わると、手取りが減ることはありますか?

ありません。所得税の高い税率は区分を超えた部分にだけかかる仕組み(超過累進課税)なので、年収が増えれば手取りも必ず増えます。手取りが「崖」のように減るのは、税金ではなく社会保険の扶養から外れるとき(106万円・130万円の壁)です。